日本カムリ学会へようこそ 英国を構成する4つの国の一つ、「ウェールズ」。「ウェールズ」の言葉、文学、歴史、文化などを研究し、啓蒙活動を行うことが本学会の目的です。本学会では「ウェールズ」という国を「カムリ」と呼んでいます。「ウェールズ」はこの国の英語の呼び方です。しかし「ウェールズ」には英語とは全く異なる独自の言葉があります。その言葉でこの国は「カムリ」(Cymru)と呼んでいます。本学会では、英語だけでなくこの国の言葉(カムリ語)を用いてこの国を見つめ、この国について理解しようと努めています。

第27回例会開催のお知らせ



 以下の要領で、日本カムリ学会の第24回例会を開催致します。お誘い合わせの上ご参加下さい。

 お問い合わせ、出欠のご連絡はお問い合わせフォームをご利用下さい。

 

開催日時:2018年12月8日(土)13:30~16:30

 

 場所:エル・おおさか(大阪府立労働センター) 5501

      (エル・おおさかへのアクセスはこちら

 

              プログラム

受付開始  13:30

個別報告1 14:00~15:00

ウェールズにおけるチャーティスト運動

               報告者 梶本 元信

休憩    15:00~15:15

 

個別報告2 15:15~16:15

Peter Wynn Thomas著『カムリ語文法』について」    

報告者 小池 剛史

 

 総会    16:15~16:30

懇親会   18:00~

 

 

大阪梅田の英国パブ『シャーロック・ホームズ』にて関西ウェールズ協会と共催のクリスマスパーティーを予定しております。

 

個別報告1

【論題】ウェールズにおけるチャーティスト運動

                                   報告者 梶本 元信

 

 産業革命の時代は、ウェールズの多くの労働者にとっては、苦難の時代であった。とりわけ、南部の鉱工業地域では、急速な人口増加に伴う都市インフラやアメニティ不足、激しい景気変動に伴う労働不安、極度の社会格差などの影響もあって、急進主義思想が広がり、時には暴力を伴う民衆運動として爆発した。チャーティスト運動は基本的には、人民憲章の実現を旗印に、労働者を中心とする政治上の改革運動であったが、その運動の背景には社会的経済的不満も存在した。その際1834年に実施された救貧法の改定、すなわち、新救貧法の制定や、労働組合運動との関連も無視できない。新救貧法は、当時の「レッセ・フェール」哲学を反映して制定され、労働者の立場から見れば極めて過酷な立法であったし、少なくとも産業革命期には、労働組合の結成は団結禁止法により禁止されており、それが廃止されたのちにも経営者による弾圧は続いた。このため当時の労働者は非合法活動や秘密結社による抵抗を行うことが多かった。本報告では、ニューポート蜂起(183911月)によって頂点に達するウェールズのチャーティスト運動について、その社会経済的背景、運動参加者、当局側の姿勢など、多面的に考察する。

 

個別報告2  「Peter Wynn Thomas著『カムリ語文法』について」

                                     報告者 小池剛史

 

カムリ語(ウェールズ語)文法を最も包括的に纏めた研究と言えば、Peter Wynn Thomas著の『カムリ語文法』(Gramadeg y Gymraeg,カムリ大学出版局、1996年)が挙げられるであろう。カムリ語の学習書とは異なり、カムリ語文法を体系的に扱った文法書はいわゆる「伝統文法」つまりラテン語文法に準拠してカムリ語を記述したものが多く、カムリ語使用の実際とかけ離れた記述となることが多い。それに比べて本書は、現代カムリ語の実情に即した「記述文法」的アプローチで書かれている。いわゆる文法事項(語順、品詞、形態等)だけでなく、カムリ語の使用域(使用される場面)、地域方言に詳しく言及し、現代カムリ語の研究者だけでなく学習者にも大変有益な情報を提供してくれる。

 

 現在本書を講読中であるが、中間発表として、特に動詞の屈折変化の記述に関し、これまでの「伝統的」文法書と比較対照して、本文法書の記述の特徴を多角的に紹介したい。