日本カムリ学会へようこそ 英国を構成する4つの国の一つ、「ウェールズ」。「ウェールズ」の言葉、文学、歴史、文化などを研究し、啓蒙活動を行うことが本学会の目的です。本学会では「ウェールズ」という国を「カムリ」と呼んでいます。「ウェールズ」はこの国の英語の呼び方です。しかし「ウェールズ」には英語とは全く異なる独自の言葉があります。その言葉でこの国は「カムリ」(Cymru)と呼んでいます。本学会では、英語だけでなくこの国の言葉(カムリ語)を用いてこの国を見つめ、この国について理解しようと努めています。

第24回例会開催のお知らせ

日本カムリ学会 会員各位  

 

 以下の要領で、日本カムリ学会の第24回例会を開催致します。お誘い合わせの上ご参加下さい。参加ご希望の方は、「お問い合わせ」より、参加ご希望の旨お知らせ下さい。

 

開催日時:2016年12月10日(土)13:00~17:00

  場所:      大阪大学中之島センター 講義室303 会場への地図はこちら

   

プログラム

受付開始 13:30

個別報告 14:00~14:50

「南ウェールズの産業革命と港湾建設

          ――カーディフ港とスウォンジー港を中心として――」

報告者 梶本元信氏

休憩   14:50~15:00

  講演   15:00~16:30

「『アイルランド地誌(Topographia Hibernica)』を読む

-ギラルドゥスはなぜアイルランド人・社会を酷評したのか-」

                                            講演者 永井一郎氏

 

  総会   16:30~16:45

  懇親会   18:00~  (詳細はこちら)

 

 

報告要旨

個別報告

南ウェールズの産業革命と港湾建設

――カーディフ港とスウォンジー港を中心として――

 

                 報告者 梶本元信氏

産業革命期のイギリスでは、運河、道路、鉄道など、主な交通インフラの建設や経営は、中央政府ではなく、多くの場合、民間人によって行われた。港湾設備も例外ではなかった。とりわけ、潮の干満差が10メートルにも達する、南ウェールズの港では、産業革命や海運エネルギー革命に伴う船舶の大型化に伴い、荷役作業は、潮の満ち干の影響を受ける桟橋ではなく、ますますウェット・ドック(wet dock)で行う必要が出てきた。それらの多くが民間人や地方自治体によって建設されたのである。南ウェールズの中心港、カーディフ、スウォンジー、ニューポート、バリー、ペナース、ポートターボット、ニース、ブリトンフェリー----これらの港のいずれも、大抵は民間人の手で、稀に地方自治体が中心となって建設された。本報告では、とりわけ、第2代ビュート侯を中心とするカーディフでのドック建設と、ハーバー・トラストを中心に建設されたスウォンジー港に焦点をあわせることにより、両港の建設プロセスと、その後背地の産業発展との関連を比較検討する。

 

講演

「『アイルランド地誌(Topographia Hibernica)』を読む

-ギラルドゥスはなぜアイルランド人・社会を酷評したのか-」

                      講演者 永井一郎氏

 

ギラルドゥス・カンブレンシスの処女作『アイルランド地誌』はよくまとまった地誌である。序文で彼は、一人の文筆家として、これまで西ヨーロッパの知識人、支配者の間でほとんど顧みられることのなかったアイルランドについて細かく紹介したいと述べている。これが彼のひとつの、表立った執筆意図であったことは間違いない。

その一方、同書を単純に地誌と見ると、なぜ彼がアイルランド人・社会についてとうてい事実とは思えないような説明をし、「野蛮な」国と酷評しているのか分からなくなる。彼は何か別の執筆意図をもっていたのではないか。こうした仮説を立てて、本報告では2つの面から彼の執筆意図を探ってみる。ひとつは同書の記述の中から、もうひとつは、執筆時に彼が置かれていた状況やかかえていたと思われる課題からの探索である。 

この報告で、当時イングランド王宮で見られたアイルランド人・社会に対する偏見を彼も共有していたこと、しかし、そうした偏見以上にアイルランドを酷評しなければならない理由を彼がもっていたことを明らかにしたい。