日本カムリ学会へようこそ 英国を構成する4つの国の一つ、「ウェールズ」。「ウェールズ」の言葉、文学、歴史、文化などを研究し、啓蒙活動を行うことが本学会の目的です。本学会では「ウェールズ」という国を「カムリ」と呼んでいます。「ウェールズ」はこの国の英語の呼び方です。しかし「ウェールズ」には英語とは全く異なる独自の言葉があります。その言葉でこの国は「カムリ」(Cymru)と呼んでいます。本学会では、英語だけでなくこの国の言葉(カムリ語)を用いてこの国を見つめ、この国について理解しようと努めています。

第26回例会開催のお知らせ

以下の要領で、日本カムリ学会の第26回例会を開催致します。お誘い合わせの上ご参加下さい。 

 開催日時:2017年12月9日(土)13:20~17:10 

  場所:大阪大学 中之島センター 講義室602

 

参加不参加は、本学会HPのお問い合わせフォームをご利用下さい。

 参加費 日本カムリ学会会員 無料

     非会員 500円

 

             プログラム

受付開始   13:00

個別報告1 13:20~14:10

          「カムリ語地名カタカナ表記一覧 問題点と今後の課題」

             報告者 小池剛史氏

個別報告2 14:10~15:10

          「グラモーガンシャー運河の盛衰と運河船の船頭」

             報告者 梶本元信氏

休憩      15:10~15:20

講演      15:20~16:50

          「ギラルドゥス・カンブレンシス著『アイルランド征服』を読む」

 

                          講演者 永井一郎氏

総会      16:50~17:00

懇親会     18:00~

 

大阪梅田の英国パブ『シャーロック・ホームズ』にて関西ウェールズ会と共催のクリスマスパーティーを予定しております。

 

                       個別報告・講演要旨

 

個別報告1  「カムリ語地名のカタカナ表記一覧 ―問題点と今後の課題―」

                                          報告者 小池剛史氏

 

 25回例会における報告者の発表「「再考:カムリ語地名・人名のカタカナ表記」の中で、カタカナ表記の大枠の方針を固めた。その方針とは、方言による際の大きい話し言葉ではなく、標準化された地名の綴りが示す、書き言葉発音に基づき、綴りが想起できるようなカタカナ表記をするというものであった。その方針に従ってカムリ語地名のカタカナ表記一覧の作成が進んでおり、12月には本学会HPにて公表できる予定である。こういった標記の仕方には、話し言葉との乖離(例えばCaer-で始まるものは、「カエル-」と表記するが、話し言葉の発音では南部で[kair-]、北部で[kɑɨ]D. Thorne  A Comprehensive Welsh Grammar(1993)の音声標記による)となり、日本人の耳には「カイル-」の方が近いかも知れない)などの問題点もある。この発表では、地名のカタカナ表記一覧作成にあたって生じた様々な問題点を紹介し、議論したい。

 

  

個別報告2

グラモーガンシャー運河の盛衰と運河船の船頭                

報告者 梶本元信氏

 

鉄道が建設される前の時代、運河(canal)は、原料や生産物、生活物資の輸送で不可欠の役割を演じた。とりわけ、グラモーガンシャー運河は、産業革命の中心都市、マーサー・ティドヴィル(Merthyr Tydfil)からカーディフへの貨物輸送で重要な役割を演じた。本報告では、この運河の歴史を紹介し、運河で活躍した船頭たちの仕事を垣間見る。もっとも、当時の運河船の船頭の実態がどのようなものであったかを知ることはそう簡単ではない。というのは偉大な政治家や貴族、大企業家には何冊もの伝記が存在するが、名もない運河船の船頭は、ほとんど自らの生活を描いた伝記など残さなかったからである。実際、南ウェールズの運河について詳細な研究を行ったC.ハッドフィールドでさえ、この運河の全盛時代のナヴィや船頭についての資料が乏しいことを認めている。しかし幸いにも、近年刊行された産業考古学を中心とする研究の中で、I.ライトとS.ローソンは引退した船頭からの聞き取り調査を行うとともに、在りし日の運河に関連する貴重な写真や資料を数多く残している。ここではこれらの資料を手掛かりに、グラモーガンシャー運河で活躍した名もない船頭の仕事を垣間見るとともに、産業革命期における運河沿線の産業や人々の生活を紹介する。

 

  

講演

   ギラルドゥス・カンブレンシス著『アイルランド征服』を読む

                                          講演者 永井一郎氏

   

本報告で私は、ギラルドゥス・カンブレンシス(Giraldus Cambrensis)が第2の著作『アイルランド征服(Expugnatio Hibernica)』で読者に何を伝えたかったのか、その意図は彼の政治的スタンスとどのようにかかわっているか検討したいと考えている。ただし、彼の第1作『アイルランド地誌』について同様な検討を済ませているので*、本報告はその結論をふまえて、『アイルランド征服』では彼の執筆意図がどのように変化しているかに注目する。手掛かりとするのは同書の第2章の構成や第3部序言の暗示的な表現である。この時期にギラルドゥスのスタンスないし心境が「揺れ」ていたことをできるだけ簡明にお伝えしたい。

  

*昨年12月の大阪例会で私はこのテーマについて報告する予定であったが、身体不調のため欠席し、報告要旨を小池先生に代読していただいた。遅ればせながら失礼をお詫びし、私の勝手な振る舞いをお許しくださった方々に御礼を申し上げる。本年の報告では、当然のことながら、『アイルランド地誌』に関する私の主要な考えも紹介し、ご批判をいただくつもりである。